自宅サロンは開業届を出さないと違法?メリットやデメリットを解説

自宅サロンは開業届を出さないと違法?メリットやデメリットを解説

「自宅サロンを開業する時、開業届を出さないといけないの?」

「開業届を出すメリットとデメリットは?」

このように思っていませんか?

結論として、自宅サロンは開業届を出さなくても違法ではありません。

本記事では、開業届の概要や保健所への届出、確定申告が必要なケースについて解説します。あわせて、開業届を出すメリット・デメリットも紹介します。自宅サロンの開業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

この記事の監修者

広田 有利

広田 有利(ヒロタ アリトシ)

美容機器の製造・販売会社「株式会社エクレーヌ」代表取締役。業界最大手脱毛サロンの全店舗や、全国の大手サロンから個人サロンにまで幅広く脱毛機を導入。脱毛サロン運営のサポートも実施している。クライアントは1000社以上・販売台数は2500台以上の実績がある。

SNS

自宅サロンは開業届を出さなくても違法ではない

自宅サロンは開業届を出さなくても違法ではない

結論として、自宅サロンを開業する際、開業届の提出は法的な義務ではありません。ただし、開業届を提出することで得られるメリットは多く、事業の安定化や税制上の優遇措置を受けることができます。

一方で、提出しない場合でも一定の収入を得た場合は確定申告の義務が発生するため、税務上の責任は変わりません。ここでは、開業届の概要や保健所への届出、確定申告が必要なケースについて解説します。

そもそも開業届とは?

開業届とは、個人事業主として事業を開始したことを税務署に届け出る書類です。正式には「個人事業の開業・廃業等届書」と呼ばれています。開業届は、事業を開始してから1か月以内に提出することが義務付けられていますが、罰則規定はありません。

ただし、開業届を出すことで、税務署が個人事業主の存在を把握し、適切な税務指導や各種サービスの提供が可能になります。また、提出は税務署の窓口やe-Tax(電子申告)で無料でできるのもポイントです。

メニューによっては保健所への届出が必要

自宅サロンで提供するメニューによっては、保健所への届出や許可が必要な場合があります。例えば、まつげエクステやネイルサロンでは、美容師免許や理容師免許が必要な場合があり、アロマセラピーでも薬事法に関わる施術には注意が必要です。

なぜなら、理容師法・美容師法・あはき法により、国家資格の取得と保健所への届出が義務付けられているからです。

また、エステティックサロンの場合、医療行為に該当する施術は避ける必要があります。事前に管轄の保健所に相談し、提供予定のメニューが法的に問題ないか確認することで、後々のトラブルを防ぐことができます。

場合によっては確定申告が必要

開業届を出さない場合でも、一定の所得があれば確定申告は必要です。自宅サロンの所得が年間48万円(基礎控除額)を超える場合、または給与所得者で副業として20万円を超える所得がある場合は、確定申告の義務があります。

確定申告を怠ると、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性があります。また、自宅サロンの収入が少額であっても、将来的に事業が拡大する可能性を考慮し、最初から適切な帳簿管理を行うことが重要です。

不安な方は税理士に相談することで、適切な申告方法を確認できます。

自宅サロンで開業届を出すメリット

自宅サロンで開業届を出すメリット

自宅サロンで開業届を出すメリットは、以下の通りです。

  • 青色申告ができる
  • 就労証明に活用できる
  • 保険や共済に加入できる
  • 経費に計上できる項目や金額が増える
  • 屋号の名義で口座を開設できる
  • 各種助成金・補助金の申請資格を得られる

それぞれについて解説するので、開業届を出すべきか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

青色申告ができる

開業届と同時に青色申告承認申請書を提出することで、青色申告特別控除を受けることができます。青色申告では最大65万円の特別控除(e-Taxまたは電子帳簿保存の場合)が受けられ、所得税や住民税の大幅な節税効果が期待できます。

また、簡易簿記でも10万円の控除が適用されるため、帳簿管理に不安がある方でも始めやすい制度です。

就労証明に活用できる

開業届を提出することで、個人事業主としての就労証明が可能になります。会社に雇われている場合、在職証明書や社員証などの発行は会社が行ってくれます。しかし、個人事業主は自分で開業届を提出しなければいけません。

開業届を出すことで、保育園の入園申請や各種ローンの審査、賃貸物件の契約時などで就労証明として活用できます。

金融機関からの融資を受ける際も、事業の実在性を証明する重要な書類として評価されるため、事業の信頼性向上に役立ちます。

保険や共済に加入できる

保険や共済に加入できる

開業届を提出した個人事業主は、トラブルによる損失を補償する賠償責任保険に加入することができます。

サロン運営で起こり得るトラブルは、以下の通りです。

  • 施術中で顧客にやけどを負わせてしまう
  • 顧客から預かった物品を紛失してしまう
  • サロンが火事や自然災害に遭う

サロンを運営するうえで、これらのトラブルに遭うリスクはゼロではありません。万が一の事態が起こってしまうと、膨大な金額の賠償責任が発生することもあります。

開業届を提出しておけば、賠償責任保険に加入でき、自宅サロン経営のリスクを軽減しながら、安定した事業運営を実現できます。

経費に計上できる項目や金額が増える

開業届を提出することで、事業に関連するさまざまな支出を経費として計上できるようになります。自宅サロンの場合、家賃や光熱費の一部を経費計上でき、サロン用品や化粧品、タオルなどの消耗品も経費対象となります。

また、事業用の携帯電話代やインターネット料金、広告宣伝費なども経費として処理可能です。車両を事業に使用する場合は、ガソリン代や駐車場代の一部も経費計上できます。

適切な経費計上により税負担を軽減できるため、事業の収益性向上に役立ちます。ただし、プライベートとの区分を明確にし、適切な証拠書類の保管が必要です。

屋号の名義で口座を開設できる

開業届に屋号を記載することで、屋号名義の銀行口座を開設できるようになります。「○○サロン」や「○○エステティック」といった屋号での口座開設により、事業とプライベートの資金管理を明確に分離できます。

また、屋号名義の口座を持つことで事業の信頼性が向上するのもメリットのひとつです。さらに、事業用クレジットカードの作成も可能になり、経費管理がより効率的になります。

各種助成金・補助金の申請資格を得られる

各種助成金・補助金の申請資格を得られる

開業届を提出した個人事業主は、国や地方自治体が提供するさまざまな助成金・補助金の申請資格を得ることができます。自宅サロンにおすすめの補助金・助成金は、以下のとおりです。

  • 小規模事業者持続化補助金
  • ものづくり補助金
  • 事業再構築補助金
  • 地域商業機能複合化推進事業補助金
  • 起業・創業支援事業補助金
  • キャリアアップ助成金
  • 人材開発支援助成金
  • 地域雇用開発助成金
  • 両立支援等助成金
  • 業務改善助成金
  • トライアル雇用助成金

これらの制度を活用することで、初期投資の負担軽減や事業拡大の資金調達が可能になります。ただし、申請には事業計画書の作成や一定の要件を満たす必要があるため、事前の情報収集と準備が重要です。詳しくは以下の記事を参考にしてください。

参考記事:【2025年最新】個人サロン開業に使える補助金・助成金を紹介!

自宅サロンで開業届を出すデメリット

お伝えしたように、自宅サロンで開業届を出すメリットはたくさんありますが、以下のようなデメリットもあります。

  • 一定の収入を超えると扶養から外れる可能性がある
  • 失業者手当を受け取れない場合がある
  • 青色申告には複式簿記の知識が必要

ひとつずつ解説するので、メリットとあわせて把握しておきましょう。

一定の収入を超えると扶養から外れる可能性がある

開業届を提出し個人事業主となった場合、年間所得が103万円を超えると、配偶者の扶養控除の対象外となります。

また、社会保険の扶養については、年収130万円を超えると扶養から外れ、国民健康保険や国民年金に加入しなければいけません。

扶養から外れると、健康保険料や年金保険料の負担が発生し、世帯全体の手取り収入が減少する可能性があります。特に自宅サロンの収入が扶養の範囲内で収まる予定の場合は、開業届の提出を慎重に検討する必要があります。

失業者手当を受け取れない場合がある

開業届を提出すると個人事業主とみなされるため、雇用保険の失業給付(失業手当)を受給できない場合があります。

失業給付は「就職の意思と能力があるにもかかわらず就職できない状態」の方が対象となるため、事業を開始している状態では受給要件を満たさないと判断される可能性があります。

ただし、事業の準備段階であることを証明できれば、一定期間は受給を継続できる場合もあるため、必ずハローワークに相談しましょう。

青色申告には複式簿記の知識が必要

青色申告で65万円の特別控除を受けるためには、複式簿記による帳簿管理が必要です。複式簿記は簿記の基礎知識が必要で、初心者には難しく感じられる場合があります。また、仕訳帳や総勘定元帳、貸借対照表の作成など、一定の事務作業も発生します。

帳簿管理が苦手な方は、近年は会計ソフトの普及により、簿記の知識がなくても比較的簡単にできるため、ぜひ活用してみてください。税理士に依頼する方法もありますが、費用対効果を検討して選択することが重要です。

開業届の提出方法

ここからは、開業届の提出方法について、以下のポイントに注目して解説します。

  • 開業手続き・届出に必要な書類
  • 開業届の提出先と提出方法
  • 開業届を提出するタイミング

それぞれ解説するので、開業届の提出を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

開業手続き・届出に必要な書類

開業届の提出に必要な主な書類は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。この書類は税務署で入手するか、国税庁のホームページからダウンロードできます。記入項目は、以下のとおりです。

  • 氏名
  • 住所
  • 屋号
  • 事業内容
  • 開業日 など

また、個人事業の開業・廃業等届出書」に加え、身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)と個人番号確認書類も必要です。青色申告を希望する場合は「所得税の青色申告承認申請書」も同時に提出しましょう。

開業届の提出先と提出方法

開業届の提出先は、事業所所在地を管轄する税務署です。自宅サロンの場合は、自宅住所を管轄する税務署に提出します。提出方法は3つあり、税務署窓口への持参が最も確実です。窓口では職員による記入内容の確認を受けられ、その場で受付印を押印してもらえます。

郵送の場合は、返信用封筒を同封することで控えを返送してもらえます。e-Tax(電子申告)による提出も可能で、24時間いつでも手続きできる利便性があります。

ただし、e-Taxを利用するには事前にマイナンバーカードの取得とICカードリーダーの準備が必要です。

開業届を提出するタイミング

開業届は事業開始日から1か月以内の提出が法的に定められていますが、遅れても罰則はありません。

青色申告を希望する場合は、事業開始日から2か月以内(1月1日から1月15日までに開業した場合は3月15日まで)に青色申告承認申請書を提出する必要があるため、早めの手続きが推奨されます。

扶養控除や失業給付への影響を考慮する場合は、収入の見込みを慎重に検討してから提出時期を決定しましょう。年末近くに開業する場合は、翌年の確定申告を見越して年内に提出することで、初年度から青色申告のメリットを享受できます。

迷った場合は税理士に相談し、最適なタイミングを判断することが重要です。

開業届の準備とあわせて進めたい自宅サロンの開業準備

開業届の準備と並行して、自宅サロンの本格的な開業準備を進めることが効率的です。具体的には、以下の準備を行いましょう。

  1. 開業資金を準備する
  2. サロンのコンセプトを決める
  3. 物件を選ぶ・リフォームする
  4. 業務用脱毛機などの備品を用意する
  5. 集客方法を検討する

税務面では、会計ソフトの導入や帳簿管理体制の構築、事業用口座の開設なども早めに進めておきましょう。これらの準備を体系的に進めることで、スムーズな開業と安定した事業運営の基盤を築くことができます。詳しくは、以下の記事を参考にしてください。

参考記事:個人でも脱毛サロンは開業可能!手順や費用、失敗しないコツも解説

CUBE DUO/PROなら集客や運営のアドバイスがもらえる

CUBE DUO/PROなら集客や運営のアドバイスがもらえる

この記事では、開業届の概要や保健所への届出、確定申告が必要なケース、開業届を出すメリット・デメリットを紹介してきました。自宅サロンを開業する場合、開業届の提出は必須ではありませんが、さまざまなメリットを享受できます。

自宅サロンの開業を検討している方は、紹介した内容を参考に、準備を進めてみてください。

とはいえ、なかには「一人で開業準備を進めるのが不安…」と思っている方も少なくないはず。そんな方は、CUBE DUO/PROの集客・運営サポートの利用がおすすめです。

CUBE DUO/PROの集客・運営サポートは、集客や媒体の選択を通じて最適な戦略を実現するための知識を提供します。興味のある人はぜひ、CUBE DUO/PROのサポート利用を検討してみてください。

PAGE TOP